2023年度後期開講の「キャリアデザイン入門Ⅱ」の産学連携PBLクラスでは、ジャーナリストの畑山氏および公認会計士・税理士の杉本氏の両名から課題提示があった〔2023年11月6日(月)〕。
畑山氏からは「電動キックボードの安全かつ便利な運用を可能にする方法について、個性的なアイデア、あっと驚く解決策を自由な発想で考えてみてほしい」という課題提示があった。
事前知識として、畑山氏の出演番組「ブラマヨ弾話室 ニッポンどうかしてるぜ」を視聴し、今回の課題テーマ「電動キックボード」について学んだ。以前は電動キックボードに乗るには免許や登録が必要だったのに対し、2023年7月の法改正で16歳以上であれば無免許で乗れるようになった。時速20km以下の乗り物とはいえ、人身接触事故で子どもに重傷を負わせたり、飲酒した大学生が乗ってタクシーに激突したりする深刻な事故が起きており、その危険性が問題になっている。一方、電動キックボードはアプリで気軽に安くレンタルでき、ガソリンを使わないエコフレンドリーな乗り物である。タクシー代わりに使う若者や外国人観光客も多い。電動キックボードの良い点を活かしながら、乗り手と市民の安全を確保するにはどうしたらよいだろうか。
次に、杉本氏からは「気になる会社の有価証券報告書を読み、経営状況を把握したうえで、その会社の経営に深く影響を及ぼす外部環境の変化(円安、物価上昇、人口減少(日本)、人口増(世界)など)に対応するにはどうしたらよいかを考えてほしい」という課題提示があった。有価証券報告書は株主や金融機関が投資判断をするのに使う資料である。インターネットに公開されており、誰でも見ることができる。たとえば任天堂の有価証券報告書を読み解くと、直近の売り上げは1兆6千億円であり、コロナ禍にヒット作「どうぶつの森」やゲーム人口の増加によって最高益を記録して以降、売り上げをさほど落とさずキープしている。事業リスク要因としてはゲーム嗜好の変化、技術革新による市場変化のほか、売り上げの7割が海外であり、多額の外貨建て資産を保有していることから、為替レートの変動も挙げられている。このような情報はすべて有価証券報告書に載っている。このような企業分析は就職活動にも役立つので、この機会に興味のある業界や企業をじっくり調べてみてほしいとの説明があった。
受講生による課題解決発表会が開催された〔2023年12月11日(月)〕。
「電動キックボードの運用」については、電動キックボードと電動自転車の利点・欠点をインターネットの情報などを利用してそれぞれまとめた。前者の利点では操作の容易さと走行可能速度について上げ、欠点では初期費用の高さ、安全性の低さに焦点を当てた。後者は充電コストの低さ、乗り物としての安定性を述べ、欠点については制限速度、バッテリーが切れてしまった際にかなり重いことなどを付け加えて説明した。最後に電動キックボードを安全、便利に使う方法で規制を厳しくすることを提案した。具体的には飲酒運転の禁止、歩道での利用を不可にするという案である。
次に、「有価証券報告書を読み解く」課題について、「カルビー株式会社」を取り上げた。企業の課題を消費者行動の変化、原材料価格の高騰、サプライチェーンの混乱、為替変動リスク、環境への負荷、人権への配慮など多面的な方向から報告し、解決策として、ネット販売や情報発信を促進する、商品の内容量ではなく質を重視する、海外に市場を確保して販売を行い、為替変動リスクを回収することを提案した。また、同社において最大利益を追求する収益力強化、中長期的成長機会の多い領域にグローバル化する事業ポートフォリオ変革、スピーディな経営を実施する組織へと変革する事業基盤強化を目的とする2023~2025年の「3か年変革プラン」を紹介した。
「キャリアデザイン入門Ⅱ」を担当する松本先生からは、「発表者自身がアルバイトで触れている会社についての発表と、使ったことも触れたこともない電動キックボードについての発表であったが、実体験を盛り込んで構成できている前者と、触れたことが無いからこその客観的な視点での後者で、上手くまとめることができている」とのコメントがあった。さらに、「発表は、「まとまる」で留まってしまった感じでもある。まとめる過程で獲得できた情報や持っている知識に対して、新たに「問い」を発して「深掘り」できる機会がいくつか存在したこと、「問い」を発することで新たな知識が獲得できること、人間は持っている知識や情報が判断基準になることを、これを機会に再認識してもらえればと思う」とのアドバイスがあった。
「電動キックボード」という新しい移動手段を取り巻く環境と今後の課題や問題点について、また、有価証券報告書を通した企業情報の読み取り方について学ぶことができた産学連携PBLであった。
松本 治先生からのコメント