2022年度前期開講の「キャリアデザイン入門Ⅱ」の産学連携PBLクラスでは、ジャーナリストの畑山氏および公認会計士・税理士の杉本氏の両名から課題提示があった〔2022年5月9日(月)〕。
課題提示における資料
畑山氏からは「現在の円安である日本社会において、あなたならどのような事業を考えつくか」という課題提示があった。今回の円安の背景にはウクライナ情勢が要因として挙げられるが、過去の紛争や戦争時には日本は円高になる傾向があったため、今回の円安は過去にない要因があるとの解説があった。杉本氏からの課題提示は「インターネット上の有価証券報告書で自分の興味がある企業について調べ、コロナ禍が落ち着きつつある今後にどのような企業、あるいはどのような事業が業績を上げていくか」であった。有価証券報告書は、あくまでも過去のデータであり、過去のデータ推移以外にも、根拠となるデータを調べることが必要との説明があった。
辰巳さん、知念さん、西村さん、本岡さんの4人は協力して2つの課題に取り組み、課題解決発表会が開催された〔2022年6月20日(月)〕。
「現在の円安である日本社会において、あなたならどのような事業を考えつくか」については、円安ならば輸出ビジネスが有利となることを活かし、日本で作って海外に売る事業として「コメ輸出ビジネス」を提案した。コメは日本で在庫過剰気味である一方で、海外では日本食レストランが流行っており需要が見込まれることを、国内コメ需要の変化や日本食レストランの数、インスタグラムにおける「#日本食」の件数などのデータを提示しながら、丁寧に説明した。さらに、個人農家の年収が低く、高齢化しており、耕作放棄地が増加しているという国内コメ生産の問題点を指摘し、農業のDX化と企業法人化によって効率化を図れば、収入増と生産量増が可能であること、それによって若者の農業就労が増えることを示した。
畑山氏からは、日本のコメに着目するのは良い発想であり、論理的にも正しく、合理的で説得力のあるアイデアだというコメントがあった。また、出席者からの「果物の輸出についてはどうか」という質問に対し、「今余っているコメをメインの輸出品と考えており、果物はそれに準ずる輸出物になると考えている」という回答があった。
学生の発表の様子
「インターネット上の有価証券報告書で自分の興味がある企業について調べ、コロナ禍が落ち着きつつある今後にどのような企業、あるいはどのような事業が業績を上げていくか」という課題について、4人が選んだのは、文具やオフィス用品で知られる「コクヨ株式会社」であった。ペーパーレス化などの影響で日本では紙の消費量は減少傾向だが、世界的に見れば紙の消費量は増加傾向にあるというデータを示し、「ストーンペーパー事業」を提案した。石を原料とするため、耐水性があって破れにくく、耐久性に優れ、環境負荷が低いという利点がある一方、製造コストが高いため高価格だが、契約書等保存が求められる紙など、使い捨てでない用途として需要が見込めるとの説明があった。
杉本氏からは、有価証券報告書の売上や利益などの数字が、ストーンペーパー事業によってどのように変わるかについて考察があれば、さらに良い発表となったとのコメントがあった。
松本先生の指導もあり、ウクライナ情勢が日本の経済へ及ぼす影響や、ポスト・コロナにおける日本の企業の動向について学ぶことができた発表会であった。
畑山氏からのコメント
杉本氏からのコメント