藤澤健さん(2011年法学部卒業)は、昨年狭き門である労働基準監督官採用試験に見事合格し、今春から厚生労働省労働基準局において労働基準監督官としての道をスタートさせました。入学後、公務職を目標とするようになった、という藤澤さんが、どのようにして「夢」を見つけ、かなえることができたのかを語ってくれました。
受験を思い立った経緯と採用試験までの道のり
ある日突然、解雇を言い渡される「派遣切り」をはじめ、長引く不況の影響で劣悪な労働条件に悩む人が増えています。
「労働基準監督官」とは、労働者の生命と健康を守り、労働条件の確保や改善を図るために、あらゆる現場に出向いて指導を行う厚生労働省の専門職員です。
労働基準監督官になるには労働基準監督官採用試験に合格しなければならないのですが、この試験の倍率は約27倍で狭き門として知られています。藤澤さんは、なぜ、この狭き門にチャレンジしようと思ったのでしょうか。 この質問に「私自身が工場勤務の経験があり、労働条件について考えさせられる場面が多々あったからです」と、藤澤さん。大学生がアルバイトをすることは、珍しいことではありませんが、藤澤さんが工場勤務をしたのは本学に入学する4年前のことでした。
「高校卒業後、大学進学を目標に資金を貯めようと思って自動車メーカーに就職しました。約2年間勤務していたのですが、仕事が楽しくて大学に行かなくてもいいかなという気持ちになりかけていました。ところが、派遣で勤務をしていた職員の仲間が突然、解雇されるのを目の当たりにすることがありました。解雇された人々の中には家族を抱えてリストラに遭い『やっと見つけた仕事』と喜んでいた人もいたのです。『働く人に権利はないのか』と疑問に思い、大学で法律を勉強しようと決意しました」。
本学への入学を目指して受験勉強をするために、勤務時間の調整を会社に要請しましたが折り合いが付かず、やむなく退社。その後2年間、勤務時間の短いアルバイトをしながら受験勉強に取り組み、22歳で法学部に入学しました。
必死に勉強してつかんだ「労働基準監督官」への夢
入学後、藤澤さんは、学部の先輩たちの多くが公務員を目指していることを知り、自らも公務職を目標とするようになりました。「法律に関わる仕事をしたいと思い、裁判所事務官を目指しました。公務員は併願が一般的なので、併願先を調べていて労働基準監督官の仕事を知りました。2つの試験を目指して勉強していると、何が何でも労働基準監督官になりたいと思うようになりました」。
「労働基準監督官」を目指すことを決意した藤澤さんは、同時に、独立開業も視野に入れるために2年次生にエクステンションセンターで「行政書士受験講座」を受講し、3年次生の時に合格。もちろん、その間も週に4日間、アルバイトをしていたそうです。さらに「今できることを精一杯やりたい」と、合氣道同好会と法律学研究会にも所属していました。
そんな藤澤さんの1日の勉強時間は何時間だったのでしょう。「忙しくて机に向かう時間がほとんどないので、歩きながら暗記をして、電車でテキストを読むなど工夫しました。テレビのニュースを見たり新聞を読むことも勉強と考えると、正確な時間は分かりません。ただ、本学の先生方は、質問などに気軽に応えてくださるので、勉強ははかどりました」との応えが返ってきました。
では、苦手な科目の克服はどうしたのでしょうか。
「数的処理という科目と経済分野が苦手です。苦手な科目につまずくと得意な法律分野をやって自信をつけて、また、苦手科目に取りかかるというように工夫しました。毎日、過去問題に取り組み、最後は得意分野をグンと伸ばして得点を獲得する戦略で試験に臨みました」と、藤澤さん。このような努力が実り、約3,400名の受験者の中から優秀な成績で合格。10月には厚生労働省から採用内定通知が届きました。
最後に、今後の目標とは。
「工場勤務時代の貴重な経験をもとに、労働者の権利を守りながら労働の義務を果たす大切さもきちんと伝えていきたいと思います。しっかり頑張ることが、夢を叶えるきっかけをくださった大阪学院大学への恩返しだと思っています。」