私の留学:新たな一歩~ハーガヘリア応用科学大学(フィンランド)

外国語学部4年次生 上野 未祐 IMG_3131.jpg この写真は、ある授業のグループワークで制作したものを撮影したものです。オランダからゲストティーチャーとして来られた先生と共に、アイデアの出し方やそれらを思いつくためにどんなプロセスがあるのかについて学ぶ授業でした。その最終課題として、即席で作られた4、5人のグループでどんなものでも良いので、何かの気持ちを表現するように言われました。渡されたのはA4の白い紙、数色のペン、そしてセロハンテープとはさみだけです。 私達のグループは様々な気持ちの中から、「信頼、信じる気持ち」を選びました。お互いに何か大切なものを持っていて、それを見せることの出来るような相手を信じる気持ちです。そのため、初めは四角い箱を作りその中に大切なものを表現するものを入れて上部が開閉可能なものにしようということになりました。その過程で紙を切っている時に、細い切れ端がいくつかあることに気付いたメンバーの一人が、気分転換にそれを輪のようにテープで止め始めました。すると、今度は別のメンバーがそれを重ね始めました。そこであることに気づいた一人のメンバーが言いました。信じるという気持ちは諸刃の剣※1であり、もっと繊細なものではないかということです。そこからまたディスカッションが始まり、しっかりとした四角い箱ではなく偶然生まれたこの形の方がしっくりくるのではないかという結論に至ったのです。相手を信じる気持ちを中身が見える形で表現し、その一方で、中身を無理に取り出そうとするとそれ自体が壊れてしまう脆さや繊細さを表現しました。 留学を終えて書いた最後のブログで、何のことかと思われたかもしれませんが、この一枚がまさに私の留学を表すことのできるものでした。 私は留学を通して、何事においても変化を恐れずに楽しむことができるのだと考えられるようになりました。柔軟な考えを持ち、視野も広がったように思います。ゴールしたときに自分が初めに思っていた形とは違ったとしても、それが全て悪いことではない。意見が対立したとしても、より良いものを生み出すためにはそれも時には必要だと今は感じています。 このグループワークでも、途中で目指す方向が変わってしまいましたが、結果として全員が満足できるものとなりました。きっかけは偶然の産物ではありますが、セレンディピティ※2という言葉があるように、本来の目的では無いところからも何かを見いだせること、気づくことができることは素敵なことだと思います。 楽しかった思い出も、大変だったことも語り尽くせないほどあった10ヶ月でした。しかし、スティーブ・ジョブズのスピーチの中に "connecting the dots(点をつなげる)" とあるように、その全てが今振り返ると今の自分に繋がっているのだと感じることができます。自分がそのときに置かれた状況には何か意味があり、それはまた自分が選んだ道やしてきたことにもしっかり繋がっているのだと。 約一年前、住み慣れた日本から遠く離れた地で10ヶ月の間生活をすることに少なからず不安を感じていましたが、今の道を選択ができた自分で良かったと思います。そして、そうさせてもらえた環境や、支えてくれた周りの方々には本当に感謝をしています。 最近は、人生は何が起こるか分からない。でもそれが楽しいとしみじみ感じています。 ※1 諸刃の剣:一方では非常に役に立つが、他方では大きな害を与える危険もあるもののたとえ。 ※2 セレンディピティ(Serendipity):別のものを探しているときに、偶然に素晴らしい幸運に巡り合ったり、素晴らしいものを発見したりすることのできる、その人の持つ才能。蛇足ですが同名の映画もあるので、機会があればぜひ!ちょっと古く2001年公開です。