ホテルのネットマーケティング
ホテルや旅館各社(以下施設と言う)は、ホームページ(以下HPと言う)の魅力度及び操作性の向上を図り、利益率の向上を目指している。
魅力度向上や操作性向上の目的は、自社のHPからの予約獲得であり旅行会社からの予約ではない。その意図は自社に直接予約を入れてもらうことで、旅行会社への手数料の削減を意図しているのである。現在インターネットには、楽天トラベル、じゃらん、Yahooトラベルなど多くの旅行会社(以下ネットエージェントと言う)が存在する。これらのネットエージェントのサイトでは、お客様の希望条件にあった各種施設が一望できるようになっている。ユーザーは、気に入った施設が見つかると、ネットエージェントのサイトからすぐに予約をするのではなく、当該施設のHPにアクセスして詳細情報を入手する。閲覧者の約70%1)がこのような行動をとる。行動パターンを 図1 お客様の予約行動 に示す。

お客様が詳細情報を入手したあと、ネットエージェントのサイトに戻って予約をすると、当該施設はネットエージェントに手数料を支払わなければならない。それを最小化するために、各施設はHPにアクセスしてきたお客様がネットエージェントのサイトに戻らないようにHPの魅力を追求している。また予約のメニューがわかりやすいところに表示されている。自社のHPでの予約行動を期待するのはネットエージェントに支払う手数料が大きく関係している。ネットエージェント経由での予約の場合、手数料をネットエージェントに支払う必要がある。その手数料は、国内系で8~10%、海外系では25%に上り、利益圧迫の要因1)となっている。この状況を打破するために、自社のHPにアクセスしたお客様が、そのまま自社のHPで予約まで行ってもらえることが重要になってくる。しかしながら、HPの魅力度・操作性アップに一部の施設についてはまだまだ改良の余地が残っているようである。
複数の施設のHPをゼミにて検証した。対象の施設は日経新聞に掲載された女子会を開く場所の人気ランキング名古屋以西トップ52)である。名古屋以西でのトップ5は、リッツカールトン、リーガロイヤル、ラ・スィート、名古屋マリオット、ウェスティン都ホテル京都の順であった。これらのホテルのHPをゼミ学生8名(女子3名、男子5名)に閲覧させ、「宿泊したい」「パーティを開きたい」のランキングを付けてもらった。ホスピタリティ経営学科の2年生である。リッツカールトン、リーガロイヤル、ラ・スィートの3施設は優劣付け難いものであった。さらにHPの魅力度のランキングも尋ねた。1位を1点、5位を5点とした場合、下位の2社はマリオット(35点)とウェスティン(36点)の2社であった。学生のコメントとして、「社長だったらHPに磨きを懸ける」との声が全員の学生からあった。上位3社はそれぞれ、13点(ラ・スィート), 16点(リッツカールトン)、20点(リーガロイヤル)の順でHPが好評であり、下位2社とは相当大きな開きである。
HPの向上とは別に、検索でも工夫が見られる。GoogleやYahooで施設名を検索すると、多くのネットエージェントも同時にリストされる。その際自社がリストの最初に表示される保証はない。そのため、リストされた中から自社のHPを選んでもらえるように、各施設は「公式サイト」という言葉がリスト上に表示されるようにしている。図2 検索結果 にそれを示す。赤丸で囲んだ部分がそれである。また、予約のメニューにたどり着くまでの操作性に差は感じられなかった。

ネットエージェントにお客様を奪われないように各施設は努力しているが、ネットエージェントがライバルかというと、そうとは言い切れない。ネットショッピングの世界には、O2O(Online to Offline)という言葉がある。価格比較サイトで最安値を探し、店舗で実物を確かめて安いネット通販で購入する行動パターンを意味する言葉である。この考えを適用すれば、価格サイト(ネットエージェント)で最安値(希望にあった施設)を検索し、実店舗(当該施設のHP)で確認する、ということになる。ネットショッピングの世界と異なるのは、HPで確認後のお客様の行動である。ネット通販で購入する(ネットエージェントのサイトに戻る)か、実店舗で購入する(自社のHPで予約する)かである。お客様にこのようなO2Oの行動を取ってもらう第一歩は、ネットエージェントのサイトに自社施設が表示される必要がある。ブランドの施設であっても、すべてのお客様に名前が浸透している訳ではないため、表示されることは重要である。さらに、閑散期の集客においてもネットエージェントの存在は重要であろう。
各施設はネットエージェントとの共存共栄を図りながらHPを工夫して利益率の向上を模索している。
参考文献
- HOTERES 2013.1.25 P25
- 日経新聞 プラスワン 2013.5.12